「ロレックス」と「オメガ」、どちらのブランド力が勝っているのだろうか。これを比べる時には、そのブランドの生い立ちから知る必要がある。
世界的にはもちろん、日本でも有名な二社だが、これらの高級時計はスイスの出身である事が多い。皆様はロレックスとオメガが日本出身のブランドではなく、スイス出身である事はご存知かと思うが、他国のブランドが日本でここまで有名なのは、彼らの圧倒的なブランド力があるが故だ。
今の高いブランド力の根幹を知らなくては、ブランド同士を比べる事はもちろん出来ないだろう。こうした高級時計を購入する際にも、ブランドの事を何も知らないのではあれば、高級時計を着飾るというよりも、高級時計に着飾られている人になってしまうので、非常に大切な基礎知識だ。
そんなブランド力は結果から言うと、ブランド力の場合「ロレックス」が一歩リードしている。
単純な年数で比較すると、ロレックスは1905年に前身の会社が誕生していて、2017年現在で112年の老舗時計メーカーである。対してオメガは1848年に創業され、167年目となる。つまり、オメガはロレックスと比べて60年以上前から時計を製作・販売しているのだ。それにも関わらず、何故オメガよりもロレックスの方が知名度が高くブランド力があるのだろうか。それには両社の歴史が大きく関係してくるのだ。
ロレックスの歴史と3大発明
ロレックスは創業から100年を超える老舗高級時計だ。しかもこのロレックスは、世界的に有名な時計の3大発明をしていることを忘れてはいけない。この偉大な発明があったからこそ、今の確固たるブランド力ががあるのだ。
ロレックスは1905年にハンス・ウィルスドルフが始めた。元々はイギリスで始めた商売だったが、関税が高過ぎたためにスイスに移り商売を続けることになる。当時は懐中時計が主流であり、腕時計はいまひとつであったが、彼は腕時計の利便性と流行性に目をつけて、次々と革新的な技術を開発していった。やがて、時計に世界初の「クロノメーター」の認定がされるのだが、それがこのロレックスであったのだ。
オイスターケース
1926年にロレックスは、3大発明のひとつ「オイスターケース」という防水性と防塵性に優れたパーツを開発し、これまでの腕時計におけるムーブメントの保護を覆すような完全防水・完全防塵という圧倒的な技術を開発し、高い技術力と実用性を世にアピールした。1927年にはイギリス人スイマーのメルセデス・グライツ氏が10時間以上泳いでドーバー海峡を横断したが、着用していたロレックスは正常な状態で動き続けていたことから、完璧な防水性が証明されることとなった。このオイスターケースの開発により、ロレックスの知名度は一気に世界中へと広まり、ブランド力が大きく拡大される切っ掛けとなった。
パーペチュアル機構
次のロレックス3大発明は、1931年に公開された「パーペチュアル機構」と呼ばれるものだ。
パーペチュアル機構とは、世界で最初の自動巻き機構のことである。これにより、ロレックスは自動巻き式の時計生産に成功した。これにはゼンマイを巻くという作業からの開放や、外部の部品を減らすことで防水に対する不安を払拭させる、一石二鳥の発明だった。今でも全てのロレックスに搭載されている機能であり、プレミア品なら時計本体が壊れていても、このパーペチュアル機構の部分だけで数万円の値がつくこともある。
デイトジャスト機能
そして最後の3大発明は、1945年に搭載された「デイトジャスト機能」になる。
これは、日付が0時になった瞬間に、翌日の日にちに即時に更新するという昨日である。今でこそ当たり前だと感じる人も多いと思うが、これは当時かなり画期的な技術として大きな話題となった。この1945年はロレックスが創業40周年の節目となった時期であり、この機能が搭載されたロレックスのデイトジャストシリーズは「完成刑」という異名を持つことになった。腕時計の実用性が大きく進歩した、まさに大発明である。
ロレックスはこうした、懐中時計から腕時計へと転換する重要な時期において、多大な功績を残したブランドである事が分かる。ロレックスのブランド力の裏には、三大発明という切っても切れない功績が関係しているのだ。
オメガの歴史と独自機構
オメガの前身のとなった時計工房は、1848年にルイ・ブランという23歳の若者が、懐中時計の組み立てを行ったことから始まった。後に彼の息子などが会社を大きくし、時計業界に大きな影響を与えることとなる。アメリカ航空宇宙局(NASA)の公認を受けた事や、数々のオリンピックの時間計測に参画したりと、世界的なイベントに数多く採用され、その技術力や精密性は高い評価を受けているのだ。特に1999年に時計師のジョージ・ダニエルズが発明したコーアクシャル機構を取り入れ、その技術力の高さが更に知れ渡る事となる。
初めて月面に降り立った時計オメガ
1965年、アメリカの航空宇宙局は宇宙空間にも耐えられる時計を探すべく、各メーカーの時計を購入してはテストを繰り返していた。それは、耐熱性や耐寒性、耐衝撃性などの様々なテストを行うものであったが、オメガのスピードマスターだけが唯一テストを全てクリアしたのだ。アメリカ航空宇宙局はオメガを公認クロノグラフとし、宇宙飛行に耐えうる精密性と耐久性を証明する事となった。後の1969年には、アポロ計画にて採用され、オメガは初めて人類と共に月面に降りた時計として一躍世界に名を轟かす事となったのである。
オリンピックの計測
オメガは1932年のロサンゼルス五輪より、全計時を委託された企業としても有名である。五輪以外にも、パラリンピックや全米ゴルフ協会などの公式大会においても全計時を担当しており、0.1秒以下の時間を競うシビアなアスリートの世界でも信頼されている。時を正確に刻むことは時計において当たり前であるが、その根本に対して一貫して誠実な姿勢で向き合ったからこそ、数々の人類の記録を計測時計として選ばれたのだろう。
コーアクシャル機構
独立時計師のジョージ・ダニエルズが開発した、「コーアクシャル機構」という新機構を採用した事は、腕時計界に衝撃を与える事になった。コーアクシャル機構は時計のムーブメント内の脱進機と呼ばれる部品摩擦を軽減し、磨耗を抑える技術のことで、部品の寿命や故障率を大幅に改善する機構であった。しかし、コーアクシャル機構を導入する事は技術的に量産が難しく、どのメーカーも採用を見送っていた中で、オメガだけが唯一採用したのだ。 オメガは、本来5年に一回程度必要だった時計のオーバーホールを10年に1回と、大幅に伸ばす事に成功した。現在もなお、この機構を採用するのはオメガのみであり、コーアクシャル機構といえばオメガの耐久力を現す言葉となったのである。
こうした歴史的背景から、オメガは世界中でも人気の時計として今も一流ブランドとしてロレックスと肩を並べて競っているのである。
どちらのブランド力が強いか
ロレックス
- 知名度:☆☆☆☆☆
- 業界貢献度:☆☆☆☆☆
- 三大発明
- 腕時計初のクロノメーター認定
オメガ
- 知名度:☆☆☆☆★
- 業界貢献度:☆☆☆☆☆
- コーアクシャル機構
- NASA認定のスペースウォッチ
結論、ここはロレックスの勝ちと言ってよい。時計業界への貢献度を考えれば、三大発明をしたロレックスが優位である。世界的な行事に数多く関わったのはオメガであったが、2017年現在、それを知る者はどの程度いるだろうか。ロレックスは知っているがオメガは知らないと答える人も多く、日本で高級時計と言えばロレックスの名が出てくるシーンは多い。ただ、スポーツの公式大会に参加する競技者においては、公式大会の計測=オメガという認知がブランド力として優位に働く事があるので、全てにおいてロレックスのブランド力が勝っている訳ではない。
そもそも、ロレックスもオメガも両方国内においては知名度が抜群に高いので、ブランド力は両方申し分ないほどある事は間違いない。一歩リードしているのがロレックスというだけで、オメガもすぐ後ろにいるのだ。
現在腕時計はシンプルなものから多機能なものまで増えているが、ロレックスとオメガを機能面で比較するとどうなるだろうか。
それは次回の記事で考察しようと思う。