人々が高級時計に目を向けるのは、はたして時計としての価値が高いからだけでしょうか。もちろんそれもあります。高級時計は値段が高いため誰もが持てるものではなく、どちらかというと所有者には富裕層が多く、それ故にステータスシンボルにもなるのです。でもそうとばかり言い切れません。高級時計のもう一つの魅力として、価値が下がりにくいという点があります。多くの品物が長く所有していると次第に価値が下がっていくのに対して、高級時計は下がるにしてもその速度は緩やかです。いや、それどころか、逆に月日を経ても下がるどころか、逆に価値が上がる時計もあるのです。それは高級時計が投資対象になる事でもよく分かります。その点を見込んで投資として所有する人も少なくありません。このように高級時計はステータスシンボルになるだけでなく、いつまでも価値が下がらないことを見込んで、人々は投資対象としても注目しているのです。
しかし、その時計を適切な売り時で売らなければ価値も意味の無いものになってしまうでしょう。
・時計の売り時を見極める3つの方法と要因!
高級時計は一般の時計と違って、その価格が経済指標に連動する性格があります。経済指標の中でも特に影響を受けるのは為替相場や商品相場です。したがって高級時計の売却に際しては、こうした指標の変化を見過ごしてはいけません。
・・為替相場が円安に転じるのを見逃さない
為替相場の変動で円高になれば輸出に有利で、円安なら輸入に有利であることは、もはや誰でも知っていることです。高級時計はごく一部の国産品を除いては圧倒的に輸入品で占められています。ということは高級時計の売却には円安が有利になることは言うまでもありません。円安といえば輸入品が高くなることですから、海外ブランド愛好者には喜ばれませんが、逆に海外ブランド品を手離そうと思っている人にとっては大歓迎なのです。なぜなら買う側ではなく売る側に立つからです。高級時計の売却がまさにそれであり、円高こそ最大のチャンスなのです。ブランド品の時計の売却を検討している人は為替相場の動きから目が離せません。
・・金やプラチナなど、高級時計の素材価格の上昇は価格改定のシグナル
メーカーの価格改定は中古時計売却の絶好の機会です。なぜなら新品の価格が上がれば、中古品の価格も連動して上がるからです。価格改定はそれほどよくあるわけではありませんが、最近では2013年に大手ブランドメーカーがこぞって改定をし、値上げ幅は大きいところでは20%にも及んでいます。価格改定があると、中古時計の価格は何の努力もせずに勝手に上がってくれるのですから、こんなにあり難いことはありません。価格改定が行われるのはえてして高級時計の素材価格が上昇したときです。体中にアンテナを張りめぐらせて、価格改定の兆候を見逃さないようにすることが大切です。
・・生産終了になる時計の情報をいち早くキャッチする
中古高級時計の値段が上がる要員には、上に書いた二つの理由の他に生産中止があります。中止の理由はモデルチェンジであったり、不人気での販売不振であったり、いろいろですが、そのモデルの製造をやめて新品市場から撤退してしまうのです。たとえ新品市場から撤退しても中古市場には商品は残ります。新品の製造が中止されれば中古品の価格がどうなるかといえば、もちろん不人気感から時としては下がることもあります。しかし時計の中古品の市場は面白いもので、不人気な製品が急に見直されたり、希少性が理由になって価格が上昇に転じることも少なくありません。いずれにしても生産中止は値上げに転じる大きな理由の一つになりますから、チャンスを逃さないためにはメーカーの生産中止情報をいち早くキャッチしなければいけません。
・高級時計の買い取り相場が変動するのはなぜなのか?
上では「高級時計は価値が下がりにくい」と書きましたが、所有していると価値の変動がないわけではありません。もちろん変動には下落もありますが、人々が期待しているのはそれとは反対に上昇に向かう変動です。そうした変動があるからこそ高級時計に注目が集まるです。ここではどんなときに高級時計の買い取り相場が上昇に転ずるかについて、3つの場合を説明します。
・・為替相場の変動で円安になれば買取価格は上昇する
一般的に国内で生産されて国内だけで販売されているものは為替相場の変動の影響はほとんど受けません。しかし世界中に流通している商品となれば事情は大きく異なります。高級時計がまさにそれにあたり、有名なブランド品ともなれば地球上の隅々まで流通しています。もちろん日本で販売されている高級時計も例外ではなく、メーカーが所在する国から輸入されているものです。輸入には為替相場が深く関わってきます。なぜなら輸入代金はドルで決済されるからです。ということは為替相場が円安に転じれば有利になります。理由は円安の局面では輸入価格が上昇しますから、それに同調して買取価格も上昇するのです。
・・メーカーが価格改定で定価が上がれば買取価格も上昇する
高級時計は定価の改定がなされることがあります。最近では2013年に各メーカーが一斉に価格改定を行いました。改定といってももちろん値下げではなく値上げです。では値上幅はどの程度なのでしょうか?この点に関してはメーカーによって大きく異なりますが、2013年の場合、最も値上げ幅の大きかったのはブライトリングで、実に20%にも及んでいます。気になるロレックスについては、最も大きかったのがディープシーの11%です。値上げの理由としては、ニッケル価格の高騰や、SSケース(ステンレススチール)やヒゲゼンマイの原材料アップなどが上げられています。メーカーが定価を上げると中古時計の価格も上昇します。それは次のような理由からです。
※新品と中古品の価格の開きをバランスのとれたものにするため
※中古品を値上げしないと売れすぎが起きて品不足になる
※中古品取扱業者が商品を多く仕入れたり、高い値段で買取して中古品の販売価格を上昇させる。
・・生産が中止になれば中古品の価格は上がる
メーカーは同じブランドの生産をいつまでも続けるわけではなく、様々な理由により新品の生産を中止することもあります。そうなると需給バランスが崩れるため、中古品の価格が大きく押し上げられることがあります。値上がりする理由は次の点にもあります。
※新発売されたモデルの人気が低調で、逆に生産中止になった旧モデルが再び注目される。
※生産中止で希少価値が出るため人気になり、その後値段が上がる。
※不人気で製造中止になったモデルも、後になって再評価され人気が高まり値段が上がることがある。
・高級時計は「売ろうと思ったときが売りどき」と考えて良い!
ここまで時計の売り時についていろいろ考えてきました。特に売り時の見極め方についての3つの方法については分かりやすく説明出来ていると思います。時計の売却を考えている方が売り時を間違えないためには是非この方法にしたがって行動することをおすすめします。とはいえ、考え方の角度を少し変えてみますと、別の発想法があることに気づきます。それが次に説明する「時計は売ろうと思ったときが売り時」という考え方です。ここではなぜこうした考え方ができるかについて説明します。
・・いくら時計の売り時があっても、売ろうという気持がなければなければ意味がない
価値ある中古のブランド時計を持っていても所有することが目的で売却の意思がない人はたくさんいます。また売る気があってもタイミングばかり計っていて好機が来ても一向に行動を起こさない人も珍しくはありません。そうした人にとって売り時とはいったい何でしょう?はっきり言えば売りに対するモチベーションが弱いのではないでしょうか。これでは中古時計を所有する妙味は味わえません。中古時計は持つことより売却することに醍醐味があると言っても過言ではありません。では好機が来ても行動を起こさない人には売り時は訪れないのでしょうか?いいえ、そうとも言い切れません。そういう人にとっては「売ろうとも思ったときが売りどき」なのです。でもそれはそれで良いのです。為替相場をはじめ、そのときの相場をめぐる状況がどうであれ、やり方次第で高く売れる道は開かれるものです。なぜなら定番のブランド時計はいつでも需要があるため査定額の変動が少ないからです。
≪ま と め≫
以上高級時計の売り時についての解説でした。所有する中古の高級時計をなるべく高い価格で売却するためには≪高級時計の売り時を見極める3つの方法≫で述べたポイントに沿って行動することがいちばんの早道です。とはいえ、何事も考え方を一辺倒に決めつけてしまうのではなく、最後の項でとりあげた「時計は売ろうと思ったときが売りどき」という発想法があることも知っていただければ、筆者として幸甚の至りです。